3≫ 進出先の場所選び(メーカー工場の場合)

 

日本のメーカーが中国に工場を出す場合、その多くは郊外の開発区や工業区と呼ばれる所に工場を設けるのが一般的です。なぜなら中国進出をアドバイスするジェトロや銀行などの金融機関、コンサルタント会社などに相談すると“勧められる”からです。

 

しかし必要な使用面積が小さく社員数もあまり多く要らない場合、これらの場所はあまりふさわしいとは言えません


以下に郊外に工場を出す場合(賃貸物件)に考えられるメリットおよびデメリットに関して記載します。

 

●郊外に工場を出すメリット

1.家賃が安い(深セン市の郊外で1カ月10数元/u程度)。

2.工場の作業員(ワーカー)を集めやすい。

3.市内よりも作業員の人件費が安い。手当が安い。

 

●郊外に工場を出すデメリット

1.周囲の治安が良くない。選任の門番を必要とする場合がある。

2.居住区から離れているため、駐在員(日本人)の移動に運転手付きの車が必要。

3.契約出来る最低の面積が大きいため、面積単価が安くても家賃総額はあまり安くない。

4.開発区で工場を設立しようとすると、資本金をかなり高くしないと会社設立が認められにくい。

  (ジェトロの情報(2010年3月)では東莞市の開発区で製造業の会社を設立する場合、

  資本金設定がUS$100万以上必要との事)

 

 

例としてとある中小企業が工場を出す際に以下の条件が必要だとします。

 

1.必要社員数は技術者と間接スタッフで合計10名程度。

2.事務所、部品置場、組み立て場所、完成品置場を確保するために面積は300u程度必要。

3.日本からの駐在者は2名の予定だが、わざわざ通勤のための車を用意したくない。

4.駐在者は中国での生活に慣れていないので、治安が良く生活インフラが整った場所が良い。

5.当面の運転資金は考慮するが、資本金額を出来るだけ少なめに設定して会社を設立したい。

 

上記の様な条件ですと郊外の開発区はふさわしくありません。この様なケースでは郊外の工場よりも市街地に近い工場の方がより条件にふさわしい環境が整っています。

 

深セン市を例に挙げると市街地に近い工業区として

・福田区の八卦嶺

・福田区の金地

・南山区の蛇口

 

等がありますがこれらの場所は深セン市が経済開発特区として開放されてから工業区として

発展してきた場所です。

 

今では人件費の上昇や人材不足から作業者を数多く必要とする工場は郊外に引っ越して行きましたが

あまり規模の大きくない企業はこれらの工業区に数多く残っており、作業員が10〜20人程度の印刷工場やアパレル工場が多く存在しています。

 

家賃は郊外の工場に比べて比較的高いですが(40〜60元/u)、小さい面積(200u程度)から借りられますので家賃総額はそれほど大きな金額にはなりません。(ちなみに50元/uの工場を200u借りた場合、1カ月の家賃は日本円で約14万円くらいです)

 

またこれらの地域は治安が良いので門番を用意する必要もないですし、日本からの駐在員もバス通勤が可能です。

 

生活インフラも外資系スーパーマーケットやレストランも多く、郊外に比べ非常に生活しやすい環境です。

 

 

また会社設立時の資本金設定額に関して、実績として外資系独資企業の工場で50万人民元(日本円約700万円)で設立する事が出来ています。この点も郊外の開発区に比べて魅力のあるところです。